沖縄県産本大賞2004(沖縄県産本ネットワーク)受賞作
八重山人(ヤイマピトゥ)を通して見える八重山の姿
八重山に密着した生活情報誌『月刊情報やいま』の巻頭で連載中のコーナー、『八重山人(やいまぴとぅ)の肖像』が、連載十年をむかえました。第一回の星美里(現:夏川りみ)さんをはじめとする105名の「ヤイマピトゥ」を紹介。さまざまな分野で活躍する“八重山人”の考え方や生き方を通して“八重山”の姿を見ることができる。さらに資料として「戦後八重山人物五十年史」、「八重山人の肖像に寄せて」を収録。
収録されている「ヤイマピトゥ」
星 美里(夏川りみ)、牧野 清、大島 保克、桃原 用永、上勢頭 同子、本名 光、喜舎場兼美、平田 大一、濱崎 マント、BEGIN、多宇 正・仲島 タマ、玉代勢 長傳、崎山 吉子、石垣 信著、玉代勢 光子、兼元 仁王、新城 知子・新城 音絵、戸眞伊 擴、渡嘉敷 進、石垣 金星、長田 紀友、高嶺 方祐、池村 泰欣、石垣 里八、金城 珍吉、山根 慶子、慶田城 實、辻 弘、安里 勇、小底 致市、崎枝 浩二、宮城 松夫、宮良 榮子、伊良皆 高則、潮平 俊、大浜 一郎、與那國 光子、白保 千代、白百合クラブ、那根 武、森田 孫榮、定歳 実勇、狩俣 浩正、日出克、冨永 実彦、島村 修、岸本 ふぢ子、宮良 長明、大底 朝要、前花 哲雄、鳩間 可奈子、新 正元、池間 苗、那良伊 千鳥、与那覇 しづ、仲新城 淳、具志堅 用高、嶺 よう子、新嵩 喜八郎、新良 幸人、識名 清、大浜 安功、新城 安善、石垣 愛子、内盛 スミ、崎原 毅、与座 英信、親盛 長明、池上 永一、宮良 長久、後田多 保、伊志嶺 吉盛、新井 潔、宮良 ゆうな・宮良 断、三木 健、石垣 信知、新 絹枝、石垣 繁、ミヤギマモル、田底 重雄、崎枝 将人(NOSE WATER)、本若 博次、玉那覇 有公、島仲 由美子、宮良 松、平良 常、内原 加代子、宇根 由基子、崎山 陽一郎、田本 徹、入嵩西 清佐、渡久山 長輝、宮良 康正、小底 弘子、大山 貞雄、宮良 忍(DA PUMP)、大工 哲弘、崎山 直、Booing Sheyner、大仲 浩夫、クイヌパナ、仲若 直子、瀬戸 静、田場 由盛、池田 卓
著者
石盛 こずえ(いしもり こずえ)
1973年那覇市に生まれ、6歳で両親の郷里・石垣島へ。沖縄国際大学を卒業後、県立図書館八重山分館、南山舎(『情報やいま』編集)、石垣市立図書館などで勤務。20歳から写真家の今村光男氏と共に「八重山人の肖像」の連載を開始、以後、約13年連載を続ける。現在は入松田こずえに改姓。
書評 沖縄タイムス
表紙の老女の横顔にまず見入ってしまった。美しい。
額と口元にきざまれた深いしわ、ほおの老班、かなりの高齢であろう。後ろに流した白い髪の丈で女性だと分かるのだが、性別ばかりでなくすべてを超越したようなまなざし、諦観とそして希望さえ感じられる静謐な風貌に思わず息をのむ。
この表紙に魅せられて多くの人が本を手に取ってみるのではないだろうか。
お年寄りの顔で惹きつけておいて第一ページには、今をときめく夏川りみが、まだ星美里の名前で歌っていたころの可憐な写真である。なんとも心憎い配置に何故かホッとする。
八重山の人は自分の郷里を、愛着をこめて「やいま」と呼ぶ。そのやいま発の月刊誌『情報やいま』で紹介された八重山人(ヤイマピトゥ)百余人、十年分の集大成である。大変な労作だ。メジャーで活躍する芸能人や芸術家、そして地元で生きる人々を職業、年齢を問わず網羅してある。見開きの左右二ページに紹介文と写真が載っている。
モノクロームというよりはそれを少しだけすかしたような、(うまく言い表せなくてもどかしい。特別な写真用語があるのだろうか)懐かしさと重厚さを感じさせる本なのだが、写っている全員の表情が素晴らしい。
八重山人特有の柔和な顔立ちの内に秘めた誇りと、かすかな含羞。これは撮影者の、島人(シマンチュ)への限りない愛情が被写体のキラリと輝く一瞬をとらえたのだろう。
南の島に根を張って、気負わずに淡々と生きる人たち、島から羽ばたこうとする若い人たち、それぞれのひたむきさが、どの紹介文からも伝わってきて心温かくなり、意欲さえわいてくるようだ。
八重山関係者、あるいは思い入れのある者が楽しむだけの本ではあまりに惜しい。多くの方々に見てもらい生への歓びを感じ取ってほしい。
巻末の「戦後人物五十年史」は、政治、医療、スポーツなどさまざまなジャンルの歴史と登場人物たちが著されていて、あの混沌とした時代を振り返り、学ぶ上でも貴重な資料である。
2004年7月17日付『沖縄タイムス』
金城真悠(作家)