石垣島平久保半島 西表石垣国立公園指定記念!
平久保半島で発見されたサガリバナの大群落。
銀河や満月の光の下で清楚に咲く白やピンクのサガリバナは、ファンタスティックでまるで妖精のようだ。
ヤエヤマシタンやオオゴマダラなどの動植物も共生するこの豊かな森の生態系は、何物にもかえがたい貴重な財産である。
大塚勝久氏は5年余の歳月をかけて、この奇跡的な森の風景を撮り続けた。
この写真集には森の中の生き生きとした動植物の祝祭がとらえられ、わたしたちをメルヘンの世界に誘う。まさに写真家生活50年の節目にふさわしい記念碑的な作品である。
詩人・砂川 哲雄
沖縄タイムス2016年8月13日掲載 「県産本コレ読んだ?」より
花と星空が奏でる変奏曲
誰も知らなかった「奇跡の森」。1本、2本であっても毎年、その幻想的な開花がニュースになる「サガリバナ」だが、石垣島北部の平久保半島では近年、何と4万4千本余りの群落が発見された。この発見を受け西表石垣国立公園の指定範囲は拡大され、2016年、石垣島北部のサガリバナ群落地とその周辺は国立公園に編入された。
大塚勝久氏は5年間、毎年、夏になるとこの「奇跡の森」に籠りきりになり、サガリバナと平久保の動植物の撮影を続けてきた。それら3万枚におよぶ撮影カットから自ら83枚を厳選し、まとめたのがこの作品集である。
だが、花を撮るのは難しい。ただでさえ「花は美しいもの」とだれしも先入観があるだけに、「作品」として成り立たせるには、よけいにハードルが高い。しかしこの作品集は、サガリバナを主題にさまざまな旋律を奏でる変奏曲を思わせる出色の出来栄えだ。
サガリバナは夜、開花して翌朝には落花する。そのため本作では、月や天の川、並ぶ惑星、離島の深い夜空を埋め尽くす無数の星粒、といった天体も多く写されている。一夜にして散るはかなく美しい花の命の「今」と、「永遠」を思わせる何千、何万光年を経て、たどり着く星の光との競演。画面からは花の甘い香りが漂い、星の流れる硬質な音までが聞こえてきそうだ。
大塚さんは「奇跡の森」の第一発見者である米盛三千弘・邦子さん夫婦らと共に「平久保サガリバナ保存会」を立ち上げ、その保全に汗を流してきた。そして「写真家としての使命を果たすため」森を記録し続けたという。
花は美しい。ただ、その美しさは森の豊かな生態系に支えられているからこそであり、そうした自然は未来の子どもたちからの大切な預かりものなのだ、という強い自覚が大塚さんにはあるのだろう。だからこそ、写し留められた、はかない花の今この瞬間に、星のように輝く永遠の芸術性が感じられるのだ。
大森一也
南山舎株式会社 編集
著者
大塚勝久(おおつか しょうきゅう)
1941年大阪生まれ、那覇市在住。関西大学新聞学科、日本写真専門学校卒業。
大阪トヨタ自動車(株)本社にて16年間、カメラマン兼宣伝広報に携わる。
1972 年沖縄との出合いで1980年フリー写真家として独立。以来今日まで40 年余、自然、風俗、祭祀など、八重山諸島を中心に有人・無人沖縄50島の取材を続けている。
公益社団法人日本写真家協会、日本旅のペンクラブ、日本旅行写真家協会、日本写真芸術学会会員。
2013年「石垣島宣伝部長」(石垣市観光交流協会)、2014年「美ら島沖縄大使」(沖縄県)に認証される。