心から感謝申し上げますとともに、この本を一人でも多くの方に見ていただけたらと思います。
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再び愚かな歴史を繰り返さぬために
戦後75年の節目となる2020年、南山舎では潮平正道著「絵が語る八重山の戦争」を発刊いたしました。
少年の頃、石垣島で先の大戦を経験した潮平正道氏は、将来を担う子供たちには二度と戦争など経験させるべきではないという強い思いをもって、これまで戦争の語り部としての活動をなさってきました。
しかし、語りだけではなかなか現代の子供たちに伝わりにくいため、記憶の情景を絵に描き、発表することにしたのです。
「沖縄戦」というと地上戦があった沖縄本島のことが主に取り上げられますが、八重山では「戦争マラリア」で罪もない住民が何千人も亡くなるという、他地域には見られない戦禍、惨状もありました。
本書は、写真などの記録がほとんどない戦時下の八重山の状況が、絵に描くことにより視覚化され、歴史を語り伝えていく上でとても貴重な資料の一つとなっています。
ぜひ多くの方々に本書を手にしていただき、戦争の記憶を風化させない、二度と同じ過ちを繰り返さないためにご活用いただきたいと思います。
沖縄では、沖縄戦が終結した6月になると、県内の各学校で平和学習が授業として設けられます。
その平和学習で戦争体験を子どもたちに話してほしいと、最初に依頼されたのは、今年51歳の息子、が中学生のときでした。あれから毎年のように、小・中・高校に呼ばれ、体験を語ってきました。
語るうちに、言葉だけでは戦争の実像を伝えることが難しいと感じ、体験したことを絵にして説明するようになりました。掲載した59枚の絵と説明は、正確さに欠けるところもあるかと思いますが、私の記憶をできる限りたどって作成したものです。
75年前に八重山でこんな戦争が実際にあったことを、どうしても伝えておきたいという思いからです。
著者「あとがき」より
絵が語る八重山の戦争 郷土の眼と記憶 目次 はじめに 潮平正道 3
国民学校のころまで
提灯行列 8
グングルマーセー 10
カーブヤー 12
グライダーの飛ばし競争 14
譽の家 16
方言札 18
竹やり訓練 20
白い滑走路 22
低くなった石垣 24
桟橋を造る 26
ハエを捕る 28
各家の防空壕 30
旧制中学校時代(鉄血勤皇隊)
鉄血勤皇隊 34
朝の軍事訓練 36
自爆訓練 38
デマと憲兵 40
届け先を間違えた召集令状 42
石垣島事件 44
目隠しの壁 46
大切な家畜を殺す 48
強制連行と洪水 50
洪水での命拾い 52
真っ赤な弾が飛んできた 54
みのかさ部隊 56
建設中の高等女学校を解体する 58
夕方に見た光景 60
慰安所 62
金魚 64
学校の防空壕 66
お墓で生まれた赤ちゃん 68
濡れた軍の米 70
木の上の監視所 72
農学校の偽装 74
旅団司令部の防空壕 76
旅団司令部防空壕の中 78
秘密の牛殺し 80
ニセの高射砲 82
尖閣列島遭難事件 84
避難地とマラリア
白水の避難地の入口に建つ小屋 88
白水の避難小屋 90
フーチバーの煙 92
ンガナの汁 94
遺体を雨戸にのせて 96
死んだ孫を背負って 98
幼い遺体を埋めに 100
昨日のことのように 102
食糧難とマラリア犠牲者
ムイアッコン 106
髪の毛も死んで 108
マラリアにかかったぼく 110
高熱にうなされる親子 112
娘を埋める母と息子 114
藁で結んだ二つのマブヤー 116
金網の外から 118
亡くなった母のそばで 120
眠れない死者の浜 122
隠されていた薬 124
野良犬がくわえていたもの 126
火葬場への道 128
地図・年表
八重山諸島位置図 132
石垣島拡大図 133
1945年 戦争における八重山地域のマラリア罹患状況と死亡状況 134
八重山戦争関係年表 136
あとがき 潮平正道 152
少年の目 久原道代 154
私も忘れない 久原望未 155
愚かな歴史を繰り返さぬために 三木健 156
1945年 戦争における八重山地域のマラリア罹患状況と死亡状況、 八重山戦争関係年表
潮平さんの絵が貴重なのは、この絵以外に八重山戦に関して視覚的に訴えるものが、今のところ見あたらないことである。沖縄本島や周辺の島々については、米軍部隊の記録班による当時の写真や、従軍カメラマンなどによる写真が遺されている。しかし八重山や宮古にはそれがない。(中略) ある年の夏、潮平さんに案内されて、白水の避難地跡を訪れたことがある。しかし、あの惨状は、現状からはとても想像つかないことである。それでも私たちは、潮平さんが絵で描き残した戦争の歴史に、今を生きる糧を学び取らねばならない。再びあのような愚かな歴史を、繰り返さないために。
戦争の話というのは、私たちにとっては何度聞いてもなかなか現実味のわかないものです。戦争の悲しさやつらさ、悲惨さは、きっと私たちが想像し得ないほどのものだったでしょう。学校で友達と何気ない話で盛り上がったり、一生懸命部活をしたり、海辺でひたすら語り合ったり……。これらは私が、小学校から高校時代にかけて故郷石垣島で経験したかけがえのない思い出です。しかし祖父のような世代の人たちは、大人が始めた「戦争」によって大切な人たちを失っただけでなく、私たちが味わったような、楽しく貴重な時間をも奪われたのです。そんなことはもう二度と、決してあってはならないことだと強く思います。
軍隊は戦争をつれて堂々とやってくる
住民のいのちと暮らしを徹底的に踏みつぶし
戦争はいのちといのちの殺し合い
その罪のあさましさ 残酷さ
こんな悲しみあるものか こんな空しさあるものか!
発行/南山舎(2023年6月)
判型/B5判横 モノクロ162頁
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